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卒業研究を行なうにあたって

2011-05-30更新;2009-04-03開設:清野達之

1.はじめに
これは卒業研究(以下,卒研)指導を行なう卒研生にむけて,私の指導方針と納得して欲しいこと,心構えなどを記したものです.ここに書いてある事はあくまで私(清野達之)独自の方針であり,研究室(育林・自然保護学研究室)全体の方針ではない事を申し添えておきます.

2.研究生活について
研究室に配属されて,研究室の一員になった訳ですから,ちゃんと研究をするように.大学の研究室は仲良しサークルではありません.研究者のタマゴとして,学生の本分をまっとうしてください.研究関連(本,学会参加,コンピュータなど)には惜しまずに投資することを強く勧めます.

研究室での入退室の時間や決まり事などは,研究室の他の教員や先輩の指示に従ってください.研究室に机をもらったら,研究室のメーリング・リストに加入していることを確認してください.研究室内での連絡事項はメーリング・リストに流れます.普段の連絡はメイルで行ないます.卒業論文(以下,卒論)の文章ファイルやデータのやり取りなどでファイル添付を行なう場合があります.したがって,ファイル添付が可能なメイル・アカウントを取得して私に教えてください.研究室に来ているときは一度はメイルの確認を行なってください.原則として,平日は研究室にちゃんといて研究を行なうこと.自宅でもできる,という主張があるでしょう.しかし,これまで私が指導してきた経験で言わせてもらうと,そう言ってちゃんとできた試しはありません.そのためにも,ちゃんと出てきて,研究と日々の議論を行うよう心がけてください.研究以外でも,教員採用試験や公務員試験の勉強のためでも構いません.就職活動や教育実習などで5日間以上不在になるときは,事前に指導教員(清野)にちゃんと伝えてからにしてください.

研究室の方々とは良い人間関係を築いていください.これは研究生活を送る上で重要なことのひとつです.先輩や同期など,身近な方から受ける影響はことのほか大きく,それが良い刺激であれば,切磋琢磨できる関係になれるでしょう.調査で人手が必要な場合は積極的に手伝ってあげてください.また,自分の調査で人手が必要な時は遠慮なくお願いができる関係を作ってください.他の方の調査を手伝うことは,その人のためになるだけではなく,自分の研究技術の向上にも繋がります.

基本的に研究生活に関して,きっちりと「研究」を行なっていれば,特に細かいことはいいません.成人した大人として,自分のしたこと,していないことは自分自身が責任を負うのです.卒研生として,研究には相応の時間と態度をもって取り組んで欲しいと思っています.卒研に真正面から真摯に向き合い,そして真剣に取り組んでください.卒論は必要なレベルに達していると判断したものしか受取りません

研究に関しては責任をもって最後までやり遂げてください.調査道具,実験室や研究室そして圃場も使用後はきちんと掃除をしたり,不要なサンプルをそのままにして放棄するようなことは決してないようにすること.

私の指導スタンスは,卒研生が自分自身で調査・研究が行なえるように後押しをするコーチ役という方針です.したがって,調査研究は私からの指示を待つのではなく,自らが主動的に私に相談や依頼をしてください.自分自身の卒研だという認識を強く持ち,自ら積極的に物事を進めてもらいます.調査日程,人員や調査道具の手配などはすべて自ら積極的に行なってください.最初のうちは私の方からあれこれ指示や各種手配などを行ないますが,ノウハウを理解したと思われる段階以降は,自分から主体的に適宜各種行なってもらいます.

何かあれば積極的に私に連絡をしてください.不明なところ,進行状況,調査予定,解析相談など,要はこまめに連絡を取りあえるようにしましょう.また,私からしたメイルなどからへの照会には,ちゃんとレスするようにしてください.

3.卒研進行のスケジュール
調査テーマや調査地にもよりますが,日本の温帯林で調査を行なう場合だと以下のような流れになるかと思います.下記はその例です.赤字は2009年度の学類全体の行事と各締切です

04月:研究室の居場所確保,研究計画の詳細な詰め.
05月:研究室での研究計画発表,予備調査.
06月:実際の調査(上旬から中旬にかけて本格スタート).
07月:実際の調査(梅雨を避けるように調査).
08月:実際の調査(中旬にはラストスパートをかける).
09月:実際の調査(ラストスパート,中旬にはケリをつけること).9/28と10/2に学類の中間発表会
10月:補足調査とデータ解析.
11月:データ解析と執筆.
12月:卒論第一稿提出(清野へ).
01月:卒論の推敲と発表会への準備(最終段階).1/29の16時までに「卒業研究要旨集」への原稿と指導教員の署名・捺印のある「確認表」を生物資源学類の事務(教務担当)へ提出
02月:卒論発表会.2/5までに発表スライドを提出;2/13に卒業論文発表会 卒論最終版提出(清野へ).
03月:卒論最終版の印刷と製本,研究室や演習林へ納本.

卒研生の就職活動や進学準備,教育実習への参加などの状況によって多少は変更があるかと思いますが,以上を目安にしてください.なお,指導教員を私に選定した卒研予定生には,3年生の2月頃に研究予定テーマに関する論文を数本渡しますので,それらをじっくり読んで,4月上旬頃を目処に卒研でのテーマとの関連性をまとめたレポートを作成してもらいます.早めに卒論のイントロ部分の格子を作ること,卒研のテーマと作業仮説を組み上げることが目的です.それを基に研究計画を練り上げていきます.

4.ゼミについて
ゼミでは研究計画や中間報告,卒論発表練習を兼ねたもの,論文紹介や輪読会など多岐に渡ります.森林ゼミは必須です.自分が興味を持ったゼミには積極的に参加し,質疑応答を楽しんでください.論文紹介を行なう場合は,英語で書かれた一流誌の最近の話から紹介してください.具体的には Journal of EcologyEcology, Oecologia, Oikos, Functional Ecology などの現在の生態学をリードしているジャーナルから選んでください.一流の研究はどういうものかを理解して,自分の研究にそのエッセンスを取り込んでいくためにも,「それなりの」ジャーナルから論文を読む作業が重要です.特に研究生活の最初の頃ほど,良い論文をじっくり読む必要があります.どういうジャーナルから選べば良いかとか,検索方法など,最初は色々と分からないかも知れません.それらは私や研究室の諸先輩にきいてみてください.検索方法では Google Scholorという検索エンジン(http://scholar.google.co.jp/)にキーワードを入れて検索すると,直接論文を探しあてることができ,便利です.
また,読むべき「古典」論文(古い昔の論文という意味ではないので注意)や教科書などもしっかり読んでおいてください.

研究計画発表では,レビュー(自分の研究に関連する複数の論文を読み,研究目的の背景をまとめる作業)を簡潔に行ない,目的(問題設定や作業仮説),方法(測定項目),予想される結果など(レビューから目的,方法を経て何が分かり,何が言えそうか)を簡潔にまとめてください.研究計画発表では,研究の目的意識をハッキリさせることが肝要です.どういう目的意識で課題を設定したのかを明確かつ簡潔に説明するようにしてください.

中間発表では,先の研究計画発表での目的について,どこまで何が分かり,何が言えそうか,ということと,今後の解析方針などを簡潔にまとめてください.また,課題に対してどこまで実現可能な段階にあるのかも示す必要があるでしょう.

セミナーと中間発表では全力で取り組んでください.セミナーに参加している方の貴重な時間を遣っているという認識で,聴く価値のある,内容のある発表をしてください.したがって,準備不足はセミナーに参加している方に対して失礼にあたります.

5.心構えなどについて
卒研をはじめるにあたって,「科学者という仕事」(酒井邦嘉・著,中公新書,820円)を読んでおいてください.卒研は科学研究の第一歩です.科学者としていかにふるまっていくかについて簡潔に書かれています.値段も手ごろだと思います.

6.最後に
いままで私の方からの立場であれこれ書きました.皆さんからの意見があればもちろん参考にします.卒研を行なうことは色々と大変かも知れません.いわゆる「楽」はありません.しかし,成し遂げた「楽しさ」は享受できると思っています.やれることを精いっぱいやっていきましょう.質問意見などあれば私(清野達之)までお知らせください.


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