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熱帯林をみつめる目
14 July 2003


この4月より身分を微妙に変えて,ほんのもう少しここでお世話になることになりました.引き続き,COE 研究員時代からの研究課題である「熱帯林における生物多様性と生態系機能」を西太平洋アジアの熱帯林で行なっていきます.
熱帯林の生態学的な特徴である生物多様性を考えると,大きく二つの観点からみることが出来ます.一つは,様々な成長特性をもつ種が,低い密度で構成される種多様性です.標高や土壌条件,地形条件などの環境条件に応じて,種がどんどん置き変わっていく,いわば「適材適所」に樹種が詰め込まれている状態です.では,種の置き替わりは何によって規定されているのでしょうか?この課題は主に種多様性が高いことで知られるボルネオ熱帯林,マレーシアはサバ州のキナバル山地林とタワウ低地林で,構成樹種の生態的特徴と個体群維持機構の視点から研究を行なっています.もう一つの観点に,環境傾度に応じて,同じ種が生理生態的な特徴を変化させることによって対応している生活型の多様性があります.特にハワイの森林ではボルネオの熱帯林と同じような気候条件にあるのですが,火山活動に加え海洋島という生物地理学な条件が加わり,極めて少数の種によって森林が構成されています.しかし,標高や土壌の栄養状態によって森林の見かけは大きく変化しています.ここでは,優占種の生活型の多型変化による環境への適応について,ハワイ熱帯林で調査を行なっています.
生物多様性という軸からは,その両局にあるボルネオ熱帯林とハワイ熱帯林ですが,もう一つの課題,生態系機能解明という視点では共通の興味から研究を進めています.タワウ熱帯林では樹高 80 m 近くになる大森林が圧倒的なスケールで広がっています.ハワイの森林では,火山活動による溶岩流の年代によって森林の高さが変化します.土壌の年代が変わるところで森林の様子ががらりと変わります.森林の高さというものは,どのように変わるのか,またそのメカニズムはどうなっているのだろうか,ということに興味を持ち,研究を進めています.森林の高さは,生態系の機能解明でも重要な意味を持ってきます.森林の高さがどのように決るのかという視点から,生態系の機能解明に取り組んでいます.
これまでは西に東に飛び回り,データを蓄積してきました.そのデータが芽吹き,まずは最初の収穫の時期になったと最近思っています.研究の詳細はこれからどんどん公表していきます.また,これまで同様,楽しく安全に調査研究生活を進めていきます.改めて今後ともよろしくお願いいたします.

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