1. プロット設営に必要な資材 測量道具
測定道具
その他
2. プロット設営の手順 その1:場所決め まず,どこにどの程度の大きさのプロットを張るかを決める.プロットの大きさに応じて,事前に周囲の状況を確認すること. その2:プロットの大きさ これは調査設定や調査予定地の地形条件などによる.正方形で設定するのが無難だが,必ずしもこれにこだわる必要はない.プロットはリター・トラップの設置や解析上の都合を考慮して,10 m ×10 m などの小区画に区切った方がよい. その3:役割分担 使用する機材などの役割分担を決める.プロットのデータ管理責任者となるべき人が,ポケットコンパス担当を担当し,プロット設営のリーダーとする(以下,トップと呼称),一人が紅白ポールを持つ(以下,ポールと呼称),一人が巻尺と杭打ち(以下,ラインと呼称).トップの指示に従い,各員配置する.トップは原点に立ち,ポールは10 m 程先で待機,ラインは原点にて待機する. その4:測量 まずはプロットの外枠を設定する.できるだけプロットは東西南北の面に沿うような形で設定した方が後々都合が良い.しかし,これに固執する必要はない. ※ポールがおおよそ10m先と思われるところに立つ.トップは原点にポケットコンパスを設定し,紅白ポールがポケットコンパスから見えるように指示する.トップがコンパスのレベルを覗いている目の地上からの高さを記録し,その高さと同じ高さにヘッドライトや手など視覚的に分かりやすいものをポールにあてる.その際,ポールが見えにくい場合は,ヘッドライトをつけてポールを振るなどの工夫が必要である(叫んでもあまり効果はない).場所が決まったら,トップはポールに場所の固定を指示する.トップはその場所の角度を野帳に記録する(プロットの地形図を描くときに必要な情報). プロットは傾斜などの地形条件を補正するために,傾斜補正の必要がある.例えば傾斜角が10度あると,10.20 m のところに杭を打つことになる.同時に水平距離が決まっている(この場合は10 m)なので,サブ・グリッド上での原点を基準にした高さもわかる.高さは,斜距離(傾斜補正距離)×SIN (角度)で求めることができる.傾斜補正の表はこちらにある.それを見ながら,トップはラインに杭を打つ場所の補正距離を指示する.ラインは指定された距離に杭を打ち,杭に座標を書く(例えば,杭の位置がX軸10 m,Y軸10 mのところだと,10-10と表記). 枠上に大径木が正面にある場合や地形的に見づらい場合などは,誤差をできるだけ生じないように枠線から少しずらして設定すること. あとは,※の作業の繰り返しになる. その5:杭にヒモを固定 測量が終わったら,杭にヒモを固定する. 3. 毎木調査の実際 その1:対象樹木 プロット内に出現する総てのサイズの樹木を測定することは困難である.そこで恣意的に基準を決め,その基準以上の個体のみについてを調査対象とする.基準の決め方は,周囲長で15 cm以上の個体(胸高直径で4.78 cm ),樹高が2 m 以上など.プロットの大きさや調査項目によって,基準を決めればよい. その2:直径測定 斜面上部の位置で,基準以上の個体の高さ135 cm の位置に,番号札(ナンバー・テープもしくはアルミタグ)を一定方向につける.番号札の下5 cm(地上高130 cm)で,幹周囲長を測定する.直径測定にはスティール・メジャーを使用し,丁寧に測定する.直径尺などは,成長量測定や成長追跡には誤差が大きいので使用しない.測定後,赤スプレー等で測定位置を標識し,再測に備える.測定位置に枝が出ていたり,瘤があったり,熱帯林では板根がある場合などは,それらの部位を避け,測定に適した位置を決めから測定する.対象個体の測定漏れがないように,注意して行なうこと.幹にまとわりついたツルなどは,丁寧に剥がしてから測定すること. その3:位置測定 位置は幹の根本位置を記録する.枠線を利用して,各枠線から直角方向に距離を測る.誤差が生じることもあるが,誤差はその個体のみの問題で,誤差が積み重なることはない.測定基準は10 cm単位で充分であろう. 距離測定は,コンベックスや巻尺,もしくは超音波距離計などを使用する.最近のセオドライトには,座標軸を測定できる機能があるものもある. また,私は試したことはないが,個体間の距離を測定することから位置測定する方法もある. 参考文献:Boose, E. R., Boose, E. F. & Lezberg, A. L. (1998) A practical method for mapping trees using distance measuments. Ecology79: 819-827. その4:樹高測定 樹高棒を使用する場合は,樹高棒がたわまないように注意すること.また,樹高棒の節が「落ちない」ようにも注意すること. 方法:測定対象個体の斜面上部の根元に立ち,垂直方向に測定する.測桿を樹冠上部まであげる.記録者は樹冠上部と測桿が水平になるように指示する. 樹高棒が使用できない高木を測定する場合は,Vertexやブルメライス,ハンドレベルなどを使用する.測定時に樹冠の上部がちゃんと見通せることが測定の前提になる.樹冠の上部がちゃんと見通せる場所に測定者が立ち,そこから樹冠最上部の角度,その場所から測定個体までの距離等を測定する. Vertexの方法:測定する個体の下にトランスポンダーを所定の高さ(通常1.3m)に置き,Vertexでのぞく.onスイッチをずっと押したままのぞくと,やがてはスコープから見えている十字が点灯する.そのとき,表示パネルで斜距離と水平距離が表示されるので,それが本当に正しいか念の為に確認する.その後,測定する個体の樹冠上部に十字をあて,onスイッチを押すと樹高が測定される. ブルメライスの方法:ブルメライスを使用する場合,角度を測る距離が決まっている.樹高測定が可能な指定距離から,樹冠上部と根元の角度を測定し,パネルから樹高を読む. ハンドレベルの方法・その1(距離を測る方法):測定対象個体から樹高測定が可能な地点までの距離 (d) を測定し,測定位置から測定対象個体の根元の角度 (C) と樹冠上部の角度 (A) を測定する.このとき,対象個体の樹高 (H) は, 目の位置が測定対象個体の根元より下の場合:H=d*(tanA-tanC) 目の位置が測定対象個体の根元より上の場合:H=d*(tanC-tanA) で,求められる. ハンドレベルの方法・その2(距離を測らない方法):測定対象個体の根元に樹高測定用の測桿を,樹高測定が可能な地点から見えるような高さ (f) に挙げる.測定位置から測定対象個体の根元の角度 (C) と樹冠上部の角度 (A),そして測桿の角度 (B) を測定する.このとき,対象個体の樹高 (H) は, H=f*(tanA-tanC)/(tanB-tanC) で,求められる. 参考文献:Kornig, J. & Thomsen, K. (1994) A new method for measuring tree height in tropical rain forest. Journal of Vegetation Science5: 139-140. 森林総研の正木隆さんが,「森林の生態学,長期大規模研究から見えるもの」(2006年,文一総合出版)に書かれた「長期観測プロットの作り方と樹木の測り方」(pp301-323)は,プロットな人は必読だと思います.一読を激しく勧めます. 4. 毎木調査用語集 あうと【アウト】:(1) プロット設営時のコンパス測量時,コンパスから紅白ポールに向けて照的したときに,コンパスと紅白ポールの間にある樹や岩,木生シダなどによって紅白ポールが見えないと一瞬思ったが,ぎりぎり横にかすめていたのでちゃんと紅白ポールが目視できた時の樹や岩,木生シダなど.(2) 直径測定時にプロットに含まれないライン上ぎりぎりの調査対象個体. あたり【当たり】:(1) プロット設営時のコンパス測量時,コンパスから紅白ポールに向けて照的したときに,コンパスと紅白ポールの間にある樹や岩,木生シダなどによって紅白ポールが目視できない時の樹や岩,木生シダなど.この場合,コンパスを左右にずらして測量する.→ストライク.(2) 直径測定時にプロットに含まれるライン上ぎりぎりの調査対象個体. さかうち【逆打ち】:毎木調査で標識した個体の直径を再測するときに,識別番号とは逆の順番から測定すること. じゅんうち【順打ち】:毎木調査で標識した個体の直径を再測するときに,識別番号の順番から測定すること. すとらいく 【ストライク】:→あたり(1). はずれ【外れ】:→アウト ばんざい【万歳】:測桿を使用しての樹高測定時に,測桿を全部伸ばして,さらにあとほんの2m も上げれば樹高が測れる場合に,測桿を頭上などに上げて樹高を測定すること.「ばんざいして!」と言われたら,地面から上げている測桿を所定の高さまで持ち上げることを意味する. ほういばり【方位張り】:プロットの面を東西南北に合わせて設定すること. みずならこーど【ミズナラ・コード】:調査時に発せられる言葉で,調査のやる気をそぐ発言のこと.調査の志気が低下するので,これらのせりふ(コード)を発することを調査中は禁止していることが多い.調査がはじまって間も無いころの「疲れた」「しんどい」「まだあ〜」「やめようや」など. 5. 関連リンク
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