第55回日本生態学会 企画集会 (T19)材の解剖特性と樹木の水利用

熱帯と温帯のブナ科樹種の解剖特性の比較と生態的意義

清野達之(筑波大・生命環境)

ブナ科は熱帯林から温帯林まで幅広く分布し,森林の優占種になる常緑もしくは落葉の樹木である.熱帯林では低地から山地林まで,コナラ属やマテバシイ属,シイ属がみられ,日本の暖温帯や冷温帯林でもコナラ属やマテバシイ属,シイ属がみられ,特に冷温帯林ではブナ属がみられる.幅広い緯度と標高に渡って分布するブナ科の材特性は,放射孔材,環孔材,散孔材と様々な道管配列様式を示し,同所的な他の樹種と比較しても大きめの道管径を示すことが多い.これらは緯度や標高などの環境傾度によってどのような変化パターンを示すのであろうか.ここでは,マレーシア・キナバル山の熱帯低地林と山地林のブナ科樹種と,日本の八ケ岳と関東平野のブナ科樹種の材の解剖特性を比較し,ブナ科樹種間での緯度傾度にそった変化とその生態学的な意義を議論する.特にそれぞれの樹種の標高と緯度傾度からみた分布帯に着目し,環境傾度に沿って材の解剖特性がどのように変化するのかを明らかにし,水利用と成長特性との関係を議論したい.また,環境傾度による木部構造の違いが,どのような機能的適応的意味があるかを議論する予定である.


質疑応答・コメント

Q: 放射孔材の道管径の最大の大きさは,環孔材のそれと比較してどうなのか?

A: やや小さめだが,あまり変わらないようだ.

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